Incentive Bonus のポイント2=LTBEとNLTBE

インセンティヴボーナスの2つ目のポイントは、インセンティヴボーナスには「ボーナスを獲得しそうなlikely to be earned」(以下、LTBEと略記)と「ボーナスを獲得しなさそうなnot likely to be earned 」(以下、NLTBEと略記)の違いがあることです。前年度の成績と同等以下ならLTBEとみなされ、前年度の成績よりも上ならばNLTBEとみなされます。

例えば、前年に7インターセプトを記録した選手がいるとします。仮に「7インターセプトしたら50万ドル」という契約を結んだとすれば、これは「クリア可能っぽいLTBE」とみなされて50万ドルがサラリーキャップに加算されてしまいます。逆に、条件を前年より上の「8インターセプト以上」に設定しておけば、「クリア不可能っぽいNLTBE」と見なされ、サラリーキャップには計上されません。これは出場試合数やプレー数に応じたボーナスの場合も同様です。

ちなみに、ルーキーに関しては、インセンティヴボーナスの比較対象となる「前年度の成績」がありません。よって、CBAの中にドラフト指名順位に応じた取り決めがありますが、取り敢えず割愛します。また、ロスターボーナスやワークアウトボーナスは簡単に達成できますから、当然LTBEと見なされます。

ということで、1人の選手のキャップヒットの公式は、

「BS+SB契約年数等分割額+インセンティヴボーナスのLTBE該当額」

となります。

ところで、重要なことですが、LTBEとNLTBEには後日談があります。

LTBEはキャップヒット的には「前払い」です。たぶん選手が「クリアするだろう」ということをアテにしています。「去年も1000ヤード突破したし、WRテレル・オウエンスなら2005年も1000ヤードは突破するだろう」と思って、「1000ヤードを越えたら1ミリオン」というLTBEのインセンティヴボーナスを設定するとします。ところが、オウエンスがホールドアウトしてしまい。途中からチームに復帰したものの800ヤードに終わる、というケースが考えられます。となると、このインセンティヴボーナスは「実際には支払われなかったのに、キャップヒットしていた」ことになります。NFLのCBAでは、これは不公平だと考えます。どのように補填するかというと、支払うはずだったのに支払われなかった1ミリオンを、翌年のチームサラリーに加えるのです。

一方、NLTBEはキャップヒット的には「後払い」です。「RBジェローム・ベティスは、去年は500ヤードしか走らなかった。だから、今年1000ヤード走ることなんてたぶんないだろう」と思って、「1000ヤードを越えたら2ミリオン」というNLTBEのインセンティヴボーナスを設定するとします。ところが、デユース・ステイリーがぶっ壊れてしまい、出番の多くなったベティスが1000ヤード走ってしまった、というケースが考えられます。となると、このインセンティヴボーナスは「実際には支払ったのに、キャップヒットしていなかった」ことになります。NFLのCBAでは、これは不公平だと考えます。ということで、支払う予定がなかったのに支払った2ミリオンを、翌年のチームサラリーから引くことによって、この問題を解決します。

毎年各チームのチームサラリーの総額にバラツキが出るのは、このLTBEとNLTBEの補正額が影響するからです。2005年のミネソタ・ヴァイキングスは、平均から実に9ミリオンも多いチームサラリーを持っているそうです。この9ミリオンとは、おそらく2004年にWRランディ・モスに掛けられた巨額のLTBE相当のインセンティヴボーナスが、モスの怪我のために達成されなかった、ことに起因しているのだろうと思います。

一方、この「LTBEでキャップヒットしておいて、仮に達成されなかったら、翌年のチームサラリーが増える」戦略を、意図的にやっていた人物がいます。これがフィラデルフィア・イーグルスの金庫番こと、ジョー・バナーです。バナーは、LTBEのインセンティヴボーナスを多くの選手に細かく設定しました。これが達成されずに支払われなければ、翌年のチームサラリーに持ち越せます。バナーは1994年にチームに参加して以来、少しずつ少しずつこの持ち越し額を増やしてきたようで、2003年についに平均よりも4ミリオン以上も多い額を持ち越すことになりました。

「LTBEで前年キャップヒットしたけど未払いだったインセンティヴボーナスは、翌年のチームサラリーに加算される」というプランは、来年のキャップ枠を広げるために今年のキャップ枠を犠牲にするやり方です。現在よりも将来を考えています。だから、2003年のフィラデルフィアは他チームよりも多いチームサラリー総額(平均75ミリオンのところ、79ミリオン)を持っていましたが、同じ方法論を続けているとすれば、実際には2004年に向けてのLTBEのパフォーマンスボーナスがチームサラリーを浸食しているハズで、フィラデルフィアが他チームよりも多くのサラリーを選手に支払っている、ということにはなりません。

ただし、このプランの凄いところは、いつか1年だけ、勝負に出ることができます。例えば10ミリオンくらい蓄積した段階で、来年のことは考えずに10ミリオンをまるまる使ってスーパーボウルを獲るために選手を掻き集めることができるのです。このあたりが、バナーが希代の策士たる所以です。例えば、保証されていないロスターボーナスは即座に全額キャップヒットしますので、翌年のチームサラリーに響くことなく、10ミリオンを使い切る方法があるのです。

話が脱線しましたが、「不払いだったLTBEと、支払われたNLTBE」は、実質的にはデッドマネーと同じように扱っても良いことになります。よって、より正確なキャップヒットの公式は、

「BS+SB契約年数等分割額」

という基本に加えて、

「今年度のLTBE該当額+前年度のNLTBE支払額-前年度のLTBE不払額」

となります(一部例外規定あり)。
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by bufbills | 2005-06-07 01:38 | Salary Cap | Comments(0)
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